すいかのドラマ三昧

最終回を迎えたアルドノア・ゼロ。
分割２クールと言う、比較的長編と言う事あってか、非常に見応えのある作品だったと思います。
これは個人的な憶測なのですが、多分、虚淵氏をはじめとするこのアニメの製作スタッフは、自分なりの「ガンダム」を作りたかったのではないかと感じてしまいます。
現在、アニメ製作に携わっている人の多くがガンダムをはじめとする富野作品に強く影響を受けた世代でもあると思うので、そんな風に思っても不自然ではないのかもしれません。
例えば「地球対火星」と言う構図は、富野氏が当初ガンダムを製作する際の案として考えていたと言う話を聞いた事がある様な気がしますし、又、「圧倒的な戦闘力のある兵器対通常兵器」と言うのはイデオンでやっています。
「自分がガンダムを作るのだった、こんな風にやるんだ！」って言うコンセプトの元作られたのがこのアルドノア・ゼロだと言うのは勘ぐりすぎでしょうか？

機転を利かせて攻略法を見つけ、迅速に攻撃する。
それを可能にさせるキャラクターとして伊奈帆と言うキャラクターは必要不可欠ですし、結果的に彼の頭の良さが即ち高い戦闘力に直結しています。
つまりアムロな訳ですね。
又、そのライバルになるキャラクターであり、もう一人の主人公であるスレイン。
一介の兵士から成り上がり、ヴァースを動かす程の立場にまで上り詰めます。
そして兵士としても非常に優秀です。
出自の差こそあれ、スレインはシャア的な立場だった様に思います。
地球対火星と言うのも、そのまま、地球対ジオンに置き換えらますね。
と言う事で、個人的には今作は「虚淵版ガンダム」として捉えながら観ていました。

さて、物語自体の感想ですが、虚淵氏にしては、それほど捻りの無い、割とストレートな内容だったのではないでしょうか？
強いて言えば圧倒的な戦闘力を誇る火星側のカタフラクトと戦う際、逆に、圧倒的に戦闘力で劣る地球側のカタフラクトが、どう言う戦略で攻略するのか？と言うのが醍醐味のひとつだったのではないかと思います。
とは言え、しっかりと随所に見所も散りばめてあって、なかなかにワクワクさせてくれています。
そして絵が非常に綺麗！
ＣＧを上手に使った迫力のあるカタフラクト戦を丁寧に描いているのは好感がもてます。
かなり目まぐるしく動きながらも、一見して敵味方が識別できる様に配慮されているのも実に良い。
実はこれ、ロボットアニメでは非常に大切な要素だと個人的には思っています。
誰がどのマシンに乗ってどんな戦いをしているのかと言うのが画面を見て理解できなければ、感情移入なんて絶対に出来ないですからね。

と、まぁ、色んな部分でしっかりとポイントを押さえている良作なのですが、敢えて苦言を呈するのであれば、優等生的過ぎて毒が無かったと言うところでしょうか？
又、ところどころにご都合主義的な部分も垣間見れて、やや残念だったかなぁ。
とは言え、同じく今期放送されていた、それこそ本家である富野氏が監督したＧのレコンギスタにくらべて、遥かに安心して楽しんで観ることが出来たのも事実です。
そう言う意味では、あれかな。
影響を受けた人たちが、影響を与えた人を追い抜いたって事なのかな？

ともあれ、なかなか楽しんで観ることが出来た作品だったのではないでしょうか。

---

皇帝の記憶が錯綜しててだんだん退行していく様が見てて痛々しかった。
と同時に、彼も元々は平和を望む人であり、決して戦争に踏み切った事実は本意ではないと言う事がわかり、尚一層アセイラムのこれからの行動を促す原動力になったに違いありません。
こうなるとスレインが陣頭指揮を執っているバースと、アセイラムが望むバースとの隔たりが大きくなる訳で、お互いの衝突は必至となります。
断腸の思いで愛するアセイラムと戦うのか、或いは、アセイラムの意思に従うのか。
又、現段階に於いてはなりを潜めているレムリナが最後にどんな行動に打って出るのか、最終回をどんな風にドラマチックに盛り上げてくれるのか大変気になります。
当然、伊奈帆とアセイラムの件、伊奈帆とスレインとの決着、更には鞠戸大尉のトラウマなど、拾わなければならない伏線は色々あると思うのですが、納得いくかたちで落としてくれるのかな？

---

ついに物語も佳境へ突入。
伊奈帆とアセイラムが両思いである事が明確になりました。
当然スレインはそれを知っていたのでしょう。
故に伊奈帆を撃った訳です。
又、今も尚、アセイラムの心は伊奈帆に向いているのを知っているので、彼の一連の行動の原動力は嫉妬だったりする訳ですね。
彼が伊奈帆ひ向けている様な嫉妬心を、レムリナはアセイラムに向けている訳で、紐は猛烈に絡んだ状態です。
おそらくレムリナはスレインに対しての想いから、何か重大な行動をやらかすのでしょうし、それによってスレインは窮地に陥るって展開になるんじゃないかな？
クルーテオの息子であるクランカインも物語上、大きな役割をもってそうなのは明らかです。
クルーテオと言えばザーツバルムの策に掛かり絶命しますが、そんな彼の息子であるクランカインと、養子とは言えザーツバルムの息子であるスレインとの間に何も無い訳が無い様に思います。

---

このアニメの醍醐味の一つがカタフラクト戦である事は間違いありません。
難攻不落の強敵の攻略の仕方がアクションゲーム的で中々見応えがあります。
あれだけ強力な敵なので、当初は１体づつ出現させていたのでしょうけど、今回は思い切って３体。
伊奈帆の頭の切れと左目がモノを言います。
難敵に知恵で打ち勝つと言うのは、非常に小気味良く、胸がスカッとしますね。

さて、ついにアセイラムに状況を知られてしまったスレイン。
まぁ、彼の目論見は上手くいかないと言う展開になるのでしょうけど、彼の目論見が上手くいくと言う展開も見て見たいなぁ。

---

いよいよ具体的な行動を開始したマズゥールカ。
彼が伊奈帆にどんな風に説得されたのは分かりませんが、言うなれば現政権に反旗を翻す行動をとるのだから、場合によっては命も危ないので、非常に危険な状況にいる訳です。
あの短い時間の中で伊奈帆は何を彼に言ったのかな？
結果として伊奈帆の青写真通りの行動をとり、アセイラムに接触した訳ですが、これでアセイラムはスレインに猜疑心を持ち始め、又、スレイン自身もアセイラムの本来の意思とは間逆の事をやっている負い目から、ますます溝が深まって行く展開になるでしょう。
その内スレインはレムリナの気持ちも鬱陶しく感じてくるのでしょうねぇ。
やっぱりスレインの自滅のシナリオは免れないなぁ。

---

これはスレインが自滅する展開かなぁ？
アセイラムに振り向いて欲しいスレイン。
念願叶って目を覚ますアセイラムですが、彼女は戦争を望まず、そもそも和平を行うつもりでいました。
伊奈帆の事も気になっているに違いありません。
当然、現在のスレインの方針には反対する事は間違いありません。
自らの行動原理でもあったはずのアセイラムに決して認めてもらえないと言う現実が今後待ち受けている訳で、ともするとゲシュタルト崩壊を起こすんじゃなかなぁ？

ところでマズゥールカの乗っていたカタフラクトはまだ残っているのかな？
伊奈帆の乗機として登場したりして？

---

着々と駒を進めているスレイン。
マリルシャンとの決闘に勝利して、彼の全財産を自分のものとし、益々力を付けていきます。
更にはレムリナからの求婚と、彼にとっての有利な要素は全て揃った感があります。
次は彼が実質的なバースの支配者になると言うシナリオになると思います。
成り上がって天下を取ると言う様が、豊臣秀吉を彷彿させている様に感じます。
いずれにせよ、成り上がっていく様は「子気味良い」ものです。

今回のみどころはやっぱりスレインとマリルシャンとの決闘でしょう。
マリルシャンのカタフラクトの攻撃方法はファンネルですね。
高性能カタフラクト同士の戦闘は物語上初めての事だと思うのですが、非常に迫力がありました。
スピーディーな戦闘展開は、地球軍とのカタフラクトとの戦いではみれません。
って言うか、あれ、やっぱり地球側のカタフラクトじゃ敵うわけないわな。
性能差がありすぎる。
って言うか、それを地上から見る事が出来る伊奈帆の目の性能、高すぎ！

さて、色々と手にし始めたスレインですが、アセイラムが目を覚ました事で、色々と糸が絡まっていって、自滅する運命なんだろうなぁ。

---

バース帝国側も一枚岩では無いと伊奈帆は踏んだのでしょう。
マズゥールカを取り込んだ上にスパイにするとは中々に狡猾です。
でも、ちょっと突っ込みどころが満載なんだよなぁ。
確かに敵さんが一枚岩では無い事は想像できるでしょう。
で、バース側にも現体制に不満を持っている人間も少なからずいる事も想像できるとは思います。
とは言え、捕虜にした人間がそう言う「反乱分子」であり、しかも人が良く、話がわかり、あまつさえ地球側のスパイとして動いてくれるなんて言うのは、ちょっと考え辛いなぁ。
ましてや相手は伯爵。
事実「私が国を売る程安い男に見えるか？」と豪語する相手。
仮にあの船にアセイラムが乗船していたとしても、それを口頭で伝えられた程度で、信念が曲がる程柔らかいとは思えません。
もしマズゥールカがあの様な行動をとるとしたら、もっと明確な根拠を示す必要があるはず。
少なくとも牢を隔てた会話だけではああはならないと感じてしまうのですが・・・。
もう少しマズゥールカを伊奈帆たちと一緒に行動させるべきだったのでは無いでしょうか？

---

地位を手に入れたスレインが次ぎにするべき事は、自らが如何にバースにとって必要な人間であるかと言う事を知らしめるプロパガンダ。
狡猾な彼は重々それを知っているのと同時に、自身も非常に優秀であるが故、大衆にわかり易い様に戦果をあげる行動に出ます。
当然成功し、今まで彼を蔑んでいたバースの騎士たちは、一目置かざるをえなくなります。
こうやって徐々に自らの地位を高めていき、最終的に彼が手に入れたいのはアセイラムである事は言うまでもありません。

さて、地球側は久々に大尉が登場。
前期ではかなり彼の素性がクローズアップされていましたが、とんと蚊帳の外だった数話が過ぎてようやく登場した感があります。
今のところ彼の存在が物語りに大きな影響を与えている様には思えませんが、どんな風に絡むのかな？

---

かくしてスレインの野望が具体的に動き始めたってところなのかな？
バース帝国の騎士たちに忠誠を誓ってたと見せかけて虎視眈々と機会を伺い、見事その機会を自分のものとした訳です。
ザーツバルム卿を見事殉職させ、自らが伯爵の地位に就き、バース帝国内での権限を手に入れた訳です。
ここで興味が出てくるのが、一体スレインの目的は何なのかと言うところでしょう。
少なくともアセイラムに対しての忠誠はホンモノの様なので、彼女の味方として、彼女の立場を尊重した環境を構築したいと目論んでいると考えるのが自然かな？

前クール最終話でスレインが伊奈帆を撃った理由があの時はよくわかりませんでした。
少なくとも彼ら二人は共闘をした仲間だと言う風に解釈していました。
ですが、アセイラムに心酔しているスレインにとってみれば、彼女の心の中に入り込んだ伊奈帆も敵と言う括りになるのかな？と言う風に解釈できました。
要はアセイラムに恋をしているが故、恋敵の伊奈帆は邪魔って事だったのでしょう。

さて、ここにきて、晴れて地位を手に入れたスレインは、やり方によってはアセイラムを妻として迎える事すら出来る様になる訳で、当然そういう行動をとり始める事でしょう。
それを軸にして伊奈帆がどんな立ち回りをするのかと言うのが、今後のこの物語の見所となるはずです。
まぁ、きっと悲恋になるんでしょうけどね。

---